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台湾ドラマレビュー
2006.2.10  感想文発表
2006.3.16  あすなろ白書評価点記入

 2006年を迎えて、ますます注目を集めている『華流』。文字の如く、中華圏(台湾・香港・中国大陸・シンガポール)や東南アジアに在住する華僑社会から発せられるカルチャーやエンターテインメントの波が、日本の社会へ押し寄せている現象を示す言葉である。地球上の4人に1人は先ず箸を使い、ほぼ漢字を使い、大部分はマンダリンを解す者なのだ。この15億余りの人間を代表し、今やコンテンツの中心にあるのが、日本の九州ほどの広さでしかない『台湾』という島から誕生したスター達の活動だ。
 
 実は『華流』は現在が初めてではない。1970年代には『功夫ブーム』が到来した。世のお父さん方は少年期に、雑誌の通販で買ったオモチャのヌンチャクを振り回し、自己満足的に主人公へ感情移入し、奇声を発しながら蹴りを入れていた経験があったかも知れない。
 1980年代からは、ストイックな物語から一線を画した『コミカル武侠ブーム』にとって変わった。この頃は、出演者の宙吊りやSFXを駆使し、多角的かつ先鋭的な手法を採り入れはしたが、いかんせん芸術性の乏しいものでしか無かった。
 そして1990年代初頭から起こった『香港芸能ブーム』だ。これは香港四大天王と持ち上げられたマルチタレントを中心に、周潤發や梁朝偉など実力派の映画人たちの発するフェロモンに憧れ、彼らのCD収集や映画雑誌を読みあさった元お嬢さんも多いはすだろう。
 『華流』は1970年代が源流であることがお分かりになられたと思うが、現在型『華流』を表現すれば、1990年代初頭の『香港芸能ブーム』に寄るところが大きい。流行とは一種の運動である。小川から滞留して沼地に落ち着く一過性のもので終わることもあれば、大河から注いで『世界市場』という名の大海原へ波及しながら、永劫に人々の精神へ波を寄せるものまであるのだ。
 さあ、2000年代は『台湾ドラマブーム』の夜明けである。文化的価値観や歴史的背景からも台湾では、日本のエンタメを率直に憧れとして取り入れ、その分野に於いて、日本でウケるものは台湾でも必ずウケるという土壌があった。更に李登輝政権下の1993年からは、日本産トレンディドラマの放映解禁に伴って、視聴した青少年に多大な影響を与えてきた。
 その彼らが社会の中心になった現代こそ、当時に培われた精神が活かされ、「次は我等が発信する番だ」と行動し、海外の原作を積極的にリメイクしたり、それらを基盤にして我流なエンタメを創造しては送り出している。
 重ねて言うが、流行とは一種の運動である。美しいものを眺めていたい、好きな人のことをもっと知りたい、興味を持ったものはやっていて楽しいといった、それぞれの運動が流れを創っているのだ。ここでは、それらの運動をひとくくりにし、筆者のストックから台湾ドラマをいたって個人的な視点で、簡単に紹介していくものとする。

題名 出演 評価 情報
01 台北愛情ウォーズ 

(原題: 愛情戰爭易開罐)

徐貴櫻  
堂娜  
楊子儒  
李麗鳳 
40点 VHS・DVDともに未発売 
日本国内CS放映済み 
(日本語字幕版)
延延と奥様の嫉妬と自尊心、堂娜扮するべっぴん部下と不倫する旦那へ対した疑念と執着心が覆いつくす。最後は奥様まで若いイケメン彼氏をつくって夫婦が離れてしまうという、劇画としては、かなり突飛な物語。高飛車な奥様役には徐貴櫻(ラベンダーのヒロインの母親役)がストレート過ぎて、この女優以外にキャスティングは考えにくいほどツボにハマっている。

 
題名 出演 評価 情報
02
恋愛占星術 

(原題:  愛情占星倶樂部) 
 

任賢齋  
陳俐呈 
70点 VHS・DVDともに未発売 
日本国内CS放映済み 
(日本語字幕版)
台湾版『男女6人夏物語』と言ってもいいぐらいの設定。男3人のルームメイトの中で、任賢齋扮する自動車整備工がやたらと花屋の三人娘にモテまくる。恋占いの結果に沿って行動する若者たちも、やがて所詮は占いに過ぎないと、運勢を自身で切り開いていく。MTV女優だった陳俐呈の演技力が下手すぎるも、ドラマ全体のストーリー性が濃く、大いに楽しめる作品。

 
題名 出演 評価 情報
03 恋のめまい愛の傷 

(原題: 烈愛傷痕)

張學友   
莫文蔚   
言承旭  
張本瑜 
60点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕・吹替版) 
日本国内CS・ローカル地上波放映済み 
(日本語字幕/2カ国語両バージョン=地上波のみ)
言承旭の迫真の演技が、香港両大スターの存在感を忘れさせるほど。原作マンガ本の存在はドラマ化されるまで知らなかった。台湾ドラマでは、せっかくの日本ロケで感じるのだか、内輪だけのストーリーで日本人とのカラミがどれも少なすぎる。侯孝賢映画作品を見習ったらどうだ。莫文蔚(キライじゃないが)の若作りの方は見ていて賛否両論だろう。他に居なかったのか?

 
題名 出演 評価 情報
04 部屋においでよ 

(原題: 來我家ロ巴)

許茹藝    
言承旭  
周渝民  
范植偉 
45点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕版) 
日本国内BSデジタル・CS・ローカル地上波放映済み 
(日本語字幕版)
F4が全員出演(仔仔のアウトロー的な演技はイイ味)しているのだが、それぞれ脇役的な位置づけで、全体の流れとして許茹藝と范植偉扮する若いアーティストの同棲生活がメイン。原作は読んでないので比較し難いが、この内容でドラマ化する必要があったのだろうか。結局はキャストの全員が大きな人間的成長もなくエンド。松たか子に自意識過剰な許茹藝がやたらキモイ。唱はイイのにね。

 
題名 出演 評価 情報
05 ラベンダー 

(原題:薫衣草)

許紹洋   
陳怡蓉 
王建隆  
徐貴櫻 
75点 VHS・DVDともに発売・レンタル中 
(日本語字幕版) 
有料インターネットテレビ配信済み 
日本国内CS・ローカル地上波放映済み 
(日本語字幕版)
公開当時の台湾で最高視聴率を弾き出したドラマだと謳わたもの。日本へ入ってきたものは所々のシーンがカットされてあった。幼なじみが成長して再会したり、ヒロインが不治の病に侵されてたりと、70年代日本の古典的メロドラマの要素はつかんである。キャストでは陳怡蓉と王建隆の演技はデビュー作とは思えない程に卓越しているが、米国育ちの許紹洋が時折話すネイティブな英語が鼻に付く上に、ニヒルな演技もクサ過ぎる。日本の芸能界ならばこういうスターはウケなかっただろう。K-1魔裟斗と石田ゆり子主演か山口達也と常盤貴子主演のエセバージョンみたいだが、泣ける回は本当に泣ける。

 
題名 出演 評価 情報
06 雪天使 

(原題:雪天使)

TORO  
王宇捷  
顏行書  
楊謹華 
60点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕版) 
日本国内CS放映済み 
(日本語字幕版)
孤児院育ちではぐれた実の兄弟が知らずして別々の世界で生きてゆくといった人間ドラマ。ワンパターンに富豪令嬢と恋に落ちる青年にはTOROが好演していて、本業のラップや彼自身のミュージックシーンもふんだんに登場する。ただ、F4と比較して、あたかも体格的に線が細い(身長の方も公称177cmはどう見てもインチキ)ので影が薄い。全体の脚本そのものも平凡で、エンディングも帳尻合わせの様に支離滅裂。東勢の牧場景色だけは美しく心が癒されるが、台湾だから仕方がないけど、題名ほど雪は見られないので念の為。

 
題名 出演 評価 情報
07 Love Storm 〜狂愛龍捲風〜 

(原題: Love Storm 狂愛龍捲風)

徐若  
周渝民  
朱孝天  
15点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕版) 
日本国内BSデジタル・CS放映済み 
(日本語字幕版)
ビビアン扮する金持ちのお嬢様が仔仔扮する通販ショップの敏腕企画部長を『命の恩人』として追い掛け廻すといった単純な物語。ビビアンを取り巻く脳天気なグループの馬鹿さ加減や、ありふれた過去のトラウマを引きずる企画部長など、ストーリーがいたって凡庸で全話に渡って期待感も無ければメリハリも無い。有名スターを登用したドラマだけにまだ見れるが、三流キャストが同じストーリーを演じれば単なるC級作品に過ぎない。

 
題名 出演 評価 情報
08 求婚事務所 

(原題: 求婚事務所゜)

呉建豪  
HEBE 
唐治平  
錢韋杉  
李康宜
95点 第1章『プリティウーマン』〜第7章『フォー・ウェディング』 
VHS・DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕版) 
日本国内CS放映済み
老若男女の恋愛を追究した芸術性・娯楽性ともに優れたオムニバス作品。現代台湾に暮らす者たちの人生観と生活観を見事なまで鮮明に描写している。ドラマにおいた起承転結の構成が素晴らしく、ライティングやカメラワーク、BGMも秀逸で、続編や映画化を期待したいほど。キャストでは李康宜扮する探偵モドキと、このドラマの監督でもある兄貴役の2人が妙におちゃめ。事務所長役の唐治平もイケてるし、その恋人役の錢韋杉との掛け合いも微笑ましい。笑いあり、怒りあり、悲しみありといった喜怒哀楽のストーリーも絶品で、台湾史上に残る名作だろう。

 
題名 出演 評価 情報
09 アイドル・アイドル2 

(原題: 偶像一級棒 老式情歌)

蘇有朋 
楊林 
施易男
80点 VHS・DVDともに未発売 
日本国内CS放映済み 
(日本語字幕版)
蘇有朋扮するコンビニの青年店長が、未明の決まった時間に訪れる楊林扮する未婚の母を想う物語。その女性が親友の伯父の昔の恋人だったと知ったり、青年店長を励ます愉快で気さくな若者たちとの友情といったシチュエーションが、絶妙なバランスでストーリーを盛り上げる。叶わぬ恋と知りつつ振舞う青年店長と女性の交流。やがて突然訪れる悲劇的な別れ。蘇有朋の愁いを残した穏やかさと、楊林の影のあるせつなさが、新旧両アイドルの演技から全編をとおして醸し出されている。人間たちが貴重な体験を踏み、新たな人生を歩んでゆくことによって、それぞれが成長していく過程を描いた秀作。

 
題名 出演 評価 情報
10 流星花園〜花より男子〜 

(原題: 流星花園)

徐煕媛  
言承旭  
周渝民 
朱孝天 
呉建豪  
錢韋杉 
楊丞琳  
95点 
+α
VHS・DVDともに発売・レンタル中 
(VHS日本語吹替版)(DVD日本語字幕・吹替版) 
有料インターネットテレビ配信済み 
日本国内BSデジタル・CS・ローカル地上波放映済み 
(日本語字幕版/2カ国語両バージョン=地上波のみ)
原作は日本ながらも青春ドラマのエポックメーキング的な作品。すべてのキャストが登場人物に、これ以上ないほどマッチしている。このドラマの影響で台湾旅行者が20%もアップしたといっても過言ではない。原作マンガを知らない人も、内田有紀主演(藤原紀香も出ていた)のVシネ版を見ていない人も、このドラマにハマることは間違いないだろう。次回分のストーリーが楽しみで仕方がないほどに面白く、DVDを初めてレンタルすれば徹夜地獄になりかねない。台湾版の後で、昨年放映された日本版ドラマを見ると、なにからなにまで日本版がショボく感じてしまう。台湾版をゴールデンで全国ネットに架ければ、高視聴率を取る回もあるのでは?ひとつだけ異議を唱えさせていただければ、CFの合間に挿入されるハーレムの一節一節がウザく、シリアスなくだりにそぐわない場合がある。ま、台湾ドラマの金字塔という評価は現段階では他の追随を許さない。

 
題名 出演 評価 情報
11 あすなろ白書 

(原題: 愛情白皮書)

楊丞琳  
余文欒  
彭于晏  
張宇 
江祖平
70点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕・吹替版) 
日本国内CS・ローカル地上波放映済み 
(日本語字幕版)

 
題名 出演 評価 情報
12 ラヴ・ディクショナリー 

(原題: SEX AND THE CITY in TAIWAN)

李倩蓉  
紀文惠  
楊謹華  
施易男 
郭品超
75点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕版) 
無料インターネットテレビ配信済み 
(日本語字幕版)
まさに台湾版のS.A.T.Cそのもの。エビちゃんセンスで親友中の親友の女の子たちが奮戦する。ストーリーがあっては無きの様な内容だが、つかみどころは押さえてあって面白いドラマ。女の子たちの華麗でセクシーなファッションや、毎回続々登場する台湾きってのイケメン男優など、視聴者の男女問わずに眼の保養にうってつけ。ドラマ中のぶっ飛びな恋愛観や人生観は、ある意味勉強にもなろう。キャストたちが社会的通念に対して依存することなく、なおかつ自立したカッコイイ女性を演じている。また、女同士の友情が小粋でたまらなく好感の持てるところ。撮影に関しては、屋内ショットのライティングが正面すぎてて難がある。自然光でもキレイに人物は撮れるものだが、そこまでこだわったのは何故だろうか。

 
題名 出演 評価 情報
13 明星☆学園 

(原題: 麻辣鮮師)       

言承旭  
朱孝天  
林韋君  
謝祖武  
賈欣惠   
65点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕版) 
無料インターネットテレビ配信済み 
日本国内CS放映済み=第2集までの20話止 
(日本語字幕版)
このドラマの製作者はGTOの大ファンだったのか。台湾完全版も取寄せて見ているが、暴走族あがりの破天荒教師にマドンナ先生、問題あり〜の個性的な生徒たち。これから見てシチュエーションが完全なGTOのパクリ。ただ、うるさい教頭とオールドミスの女教師がビミョーな関係だという点が新発想で、温かく見守りたいところ。女子高生役の林韋君がとてつもなくカワイイし、ジェリーがまだ『廖洋震』と名乗っていた頃でF4結成前の貴重なドラマ。それにしてもジェリーの演技力がこの頃から完成されていたのには驚かされる。こんな学園なら、毎日の通学が楽しいことだろう。お兄さんお姉さん方にとっては高校生時代に戻りたいと思わせる様な青春コメディ。

 
題名 出演 評価 情報
14 山田太郎ものがたり 

(原題: 貧窮貴公子)

周渝民  
伊能靜  
朱孝天  
高浩鈞 
50点 DVD発売中 
(日本語字幕/シリーズ完全版) 
DVDレンタル中 
(日本語字幕/13話短縮版) 
日本国内BSデジタル・CS・ローカル地上波放映済み 
(日本語字幕/13話短縮版)
日本のマンガを原作した仔仔扮する貧乏学生が一家の長男として、倹約した生活で大所帯のファミリーを切り盛りしていくストーリー。コメディタッチでドラマが進められる上に、この主人公が明朗快活な好青年な為に、その生活に痛々しい悲壮感は微塵もない。貧乏学生の親友として高浩鈞扮する同級生が違和感を覚えるほど冷静沈着な性格に対して、学内の先輩兄妹のひょうきんさというアンバランス感が到る所で笑いを誘う。今やスーパースターの名を欲しいままにした仔仔が最も可愛かった時期のドラマで、彼の色々なコスプレも楽しめる。ちなみに日本から吉本新喜劇の島木譲二(映画:ブラックレインの三下ヤクザ)がゲスト出演しており、下らないギャグで主人公一家を退かせている回は見どころ。

 
題名 出演 評価 情報
15 チャイニーズ ゴースト・ストーリー 

(原題: 倩女幽魂) 

徐煕媛  
陳曉東  
宣萱  
65点 DVD発売・レンタル中 
(日本語字幕・吹替版) 
日本国内CS放映済み 
(日本語字幕版) 
ダニエル扮する人間界で書生の青年が、魔界から妖怪として育ったバービィー(大S)扮する美女と出遭う時代劇で、故・張國榮(レスリー・チャン)と王祖賢(ジョイ・ウォン)の映画で有名なTVドラマ版。ベタな表現であるが、とにかく映像が美しい。撮影手法は娯楽作品の範疇でも、伝統的で高尚な脚本と左記の映像美によって、芸術作品としてでも捉えられる。キャストでは、これでもかというほどに大Sの透き通るような妖艶さに惹きこまれる。アジア地域での放送本編では各方言版があり、キャストの声は全員吹替で、当人の声ではないところが残念。日本語版の方でも、テレビで聞き慣れた大Sの声優(遠藤綾)とは別人なのでしっくり来ない。ほぼ全編に渡った大陸ロケでの壮大な景色や乱世のセットはなかなか。

 
題名 出演 評価 情報
16 消えた女 

(原題; 消失的房客)

梁學忠 
林富華 
蔡岸龍 
江冷兒
30点 VHS・DVDともに未発売 
日本国内CS放映済み 
(日本語字幕版)
台湾の社会派ホラードラマ。住宅ローンの助けとして募集した、若い夫婦の住む邸宅にスッチーが間借人としてやって来た。長期フライトで外出する気配もなく、部屋を確認すると姿も見えない。それから夫婦は夜な夜な霊的な物音と奇怪な人影に悩まされ…。台湾の住宅事情や株式投機問題、そして夫婦間の信頼度。高度経済成長を遂げて久しい台湾において、近隣住民との交際や調和等、希薄になって病んだ都会の人間関係を提議させられる。何故にスッチーは他人の家にまで偽装自殺を謀るのか。その明確な答えを視聴者へ委ねているところは解せないところ。恐怖感の中に重みのあるテーマとしては形になっているが、肝心の社会派ドラマにおける方程式を特定せずして、視聴者に問いかけている概念がどこにあるのかが判断出来ない。視聴者に想起させるのは登場人物の背景と、その先の人生だけで良いと思うのだが。



日本の九州ほどの広さ
  台湾の面積は大雑把に言えば3万6千`平米で、これは九州と同程度の陸地です。地理的にも各都市が面白いほど同じような間隔で位置しています。人の数こそ違いますが、こんな狭いところから、ここのエンタメがいま全アジアを席巻しているってのはスゴイじゃありませんか。この風車の軸が旋回し続けるか停まってしまうかは、今後幅広いジャンルのコンテンツが受け入れられる様に願いたいですし、関係者も努力して欲しいものです。恋愛ドラマとポップス一直線では、あと2年も持ちません。やがて視聴者から飽きが来ることでしょう。本当な面での華流エンタメが根付くには採算度外視してでも、それら以外の社会派ジャンルも輸入して来るべきでしょう。

1970年代の華流スター
 『ひなげしの花』でデビューしたアグネス・チャンは、美少女アイドル歌手として日本で大成功を収め、NHK紅白歌合戦に出場した初の香港歌手でした。この当時の『紅白』は東南アジア各国やブラジル、ハワイ等にも中継され、香港では殆んど無名の存在であったアグネスが、日本から逆輸入された国際スターとして、めでたく故郷でも一躍人気者となりました。台湾からも欧陽菲菲(オーヤン・フイフイ)やケ麗君(テレサ・テン)といった本国にも知られていた女性実力派歌手達が日本へ流れて来ては日本語を巧みに操り、既存のイメージを壊してまでもバラエティ番組に出演するなどの逞しさがありました。

功夫ブーム
 天皇巨星こと王羽(ジミー・ウォング)が切り開いたこの活劇を、世界的なブームに押し上げたのが他でもなく李小龍(ブルース・リー)でした。彼が主演して大ヒットした初のハリウッド進出作『燃えよ!ドラゴン』が劇場に架かった時には、本人がこの世とオサラバしていた悲劇がありましたが、全米連続TVドラマでの空手使いであった日本人チョイ役のしがない俳優が死して大スターとなり、生前に香港で撮っていたB級作品の商品価値が突如として跳ね上がる現象が起きちゃいました。ちなみに『ドラゴン怒りの鉄拳』では、上海租界を牛耳る日本人や白人たちを、中国人青年(リー)が愛国心から打倒する様を描いた物語で、彼が主演した中では筆者の最も印象深い作品でした。

1980年代の華流スター
  これは言うに及ばず成龍(ジャッキー・チェン)でしょう。ハリウッド進出作『キャノンポール』では、この時代の代表的な喜劇俳優、ホイ4兄弟の長兄・許冠文(マイケル)と出演した役が『三菱車に乗ったヘンな日本人』でしたから、その後これ程有名になった彼も、未だ欧米の片田舎では日本人と信じられているのが中華系の人間には頭が痛いところだそうです。ビッグネームになるまでは反日映画に出演したり、整形前の『少林寺木人拳』などは後で見ても可愛く懐かしいものです。コミカル路線全盛期のこの時期は、中華圏の大物歌手が日本で一旗揚げる必要もなく、強いて表せばブームというより、ある意味では銀幕だけでも今より華流エンタメが普通に根付いていた頃かもしれません。

1990年代の華流スター
 香港四大天王と言われた劉徳華(アンディ・ラウ)・黎明(レオン・ライ)・張學友(ジャッキー・チュン)《※無名時代は日本のメディア紹介でチェンの方に誤記されたことも》・郭富城(アーロン・クォック)がアイドル的存在でした。この時期は銀幕に張曼玉(マギー・チャン)、ステージに周慧敏(ビビアン・チョウ)といった女性スターも全盛だったのですが、歌って踊れて喋れて、なおかつ垢抜けたマルチタレントな男性スターのほうの人気がアジアで圧倒していた頃です。そこへ大陸の北京から彗星のごとく現れたのが王菲(フェイ・ウォン)でした。中島みゆきの『ルージュ』をカバーしたヒット曲『容易受傷的女人=傷つきやすい女』で中華圏の歌謡賞を総ナメし、そのファッションや言動で一世を風靡しました。後に日本語を話せない初の女性タレントとして本格的な日本進出を果たしますが、ドラマも映画もことごとく大失敗に終わりました。中華圏では今でも彼女の人気は根強いものの、日本での足跡は永遠に輝く星と言うよりも、不完全燃焼的に湿った花火のようでした。英語を駆使する一部の日本のスターがハリウッドで成功して来た様に、日本で成功する中華圏からのスターは日本語を理解できなければならない既定のレールがあるような時代でした。その点、台湾からやってきた日本人の父を持つ金城武(カネシロ・タケシ)と女性ユニットのメンバーだった徐若(ビビアン・スー)は、トロッコが颯爽と丘を駆け抜ける様にレールに馴染んだ2人です。両者は日本語に不自由なく、芸能ジャンルを問わずに力を発揮できる天才スターでした。ただ、金城武の日本での役柄はCF以外クール過ぎる扱いが多く、この頃は彼本来の多面的な才能を発揮させていないところが残念でした。



 
 








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